
最初この仕事をやり始めたときは、もう全然作れなかったんですよ。もう35年前ですね。教えてくれた人が、2寸の人形を飴細工のようにあっという間に作ってしまったのを見て、本当にびっくりしましたね。なんとか見よう見まねで何体か作って、売りに行きました。今でもその時の人形は励みになるように大切に持ってます。今見たら見られたもんじゃないですけどね。
とにかく、木を彫るのが好きなんですよ。木の種類によって刃を当てる角度をコンマミリ単位で変えなくてはならない。少しでもずれると、面が泣いてしまうんです。それがぴたっと合って、ぎりぎりのところで、すっと刃を入れる快感は、もういいようがないですね。体が覚えている位置に刃物が来たら、ぴたっと止まるんです。そして、一気に一刀で必要な分だけ彫る。辞めようなんて思ったこと一度もありません。死ぬまで続けたいですね。
一刀彫は本物です。
大量生産できない、世界に一つしかないものを手作りで作っています。ほんまもんの良さ、間違いないよさが備わっていて、それをわかる人はきちんと選んでくれる。まっすぐに人形を立たせるだけで、非常に難しいんです。物の形にはすべてくせがありますから、人形に芯が出ないんですよ。傾かない人形を作るのに、何年もかかります。人形の唇を彫るのに、24面彫るんですよ。ミクロのずれもなく24面で構成された唇を見ていると、積み重なってきた奈良の伝統工芸の背景を見るような気がします。
一刀彫人形を買って、大切にしてくれている方々の気持ちを、逆に私達が大切にしていきたいと思います。だから、「人形を修理して欲しい」といわれたら嬉しいですね。大切にしてきたものを、さらに大切にしていくために修理に出してくれるのですから。本当に一生使えるんですよ、プロの職人がいつでも支えているんです。それが、本物のよさってことだと思ってるんですけどね。