
一刀彫というのは、全国いろんなところにあるんですよ。奈良だけじゃない。でも、奈良の一刀彫には高級感と質の高さがあって、美術品としての価値があると思います。それは、職人の技術から来るちがいではなくて、土地柄が人形に染み付くんだと思うんですよ。奈良の持つ雅の世界。重ねてきた歴史が、奈良の一刀彫を際立たせているのではないでしょうか。
自分で作っているときに気をつけているのは、バランス、シンメトリー、マス(塊)の3つを大切にする事。そこから重量感や、面で構成される力強さが生まれてきます。特にバランスは絶対に必要な要素ですね。私は、今でも、人体のクロッキーをやっています。やはり人体の彫刻を作るときにはデッサンが必要なので、絵の練習は今でも続けていますね。
また、色彩のバランスも本当に重要です。いつも勉強しているのですが、能の装束ってすごいんですよ。西陣織の集大成だと思うのですが、その辺の色彩感覚も取り入れながら、彩色の時のバランスを考えます。
私のコンセプトは、「古くて新しい」なんです。「古くて古い」ものはなくなっていくと思うんです。骨董を見て、それに今の空気にあった要素を足していく。だから、私は今でも勉強して、もっと良い要素を人形に足していこうと思っています。一刀彫には、まだまだいろんな可能性があると思います。いろんな人が、色んな感想を持ってくれるし、反応がきちんとある。初めて見る人は実物をみたらやっぱりびっくりしますよ。だから、私もやりたいことがまだまだたくさんあるんです。そんな夢をつないできたから、33年間も続けて来れたんだと思いますね。
一刀彫人形は、僕らが魂を吹き込むものではないと思っています。買った人が使っていく中で、だんだん魂がこもっていくんですね。だから、大切にずっと長い事使って欲しいなと思っています。